小宮 知絵×秘め事

2023.12.22

事をここに記す・・・

小宮 知絵

筆者:小宮 知絵
文字数 1517 写真 7 枚

社長室での秘事から数ヶ月の間、社長は少しずつ私の心を侵していった。
気が向いた時だけ私の体を弄んでは、恥じ入る私を見て愉しむ。
衣服や息遣いが乱れるのは私だけで、社長は一糸乱れることなく落ち着き払ったまま。
仕事の息抜きに、言葉通り、私というおもちゃで遊んでいるようだ。
このまま抱かれるのだろうと覚悟をしているのに、いつも肩透かしを食う。
こちらの気持ちを昂らせるだけ昂らせ、結局まだ一度も抱かれてはいない。
いつの間にか、その時を待ち遠しく思ってしまっている自分に気付き、下半身がキュッと締まるような感覚を覚えるのだった。

関係が始まる前から何度かお邪魔している社長の自宅には、一部屋だけ鍵のかかった部屋がある。
過去に何の部屋か尋ねたことがあるが、ニヤリと笑って「趣味の部屋」で片付けられてしまい、長らく謎だった。

その秘密の部屋に、今まさに、案内されようとしている。
「入って良いよ」
社長の優しい声に導かれて部屋に入ると、想像していた趣味の部屋とは程遠く、薄暗い中に怪しげな雰囲気が漂っていた。
綺麗に整頓されているものの、溢れんばかりの隠微な何かを肌で感じる。
「そこに座って」
「あ…はい。えっ…」
ソファに腰掛けると、話をする間もなく視界が遮られた。
社長は手際良く、私の目を隠す細長い布を縛っていく。

「あ、あの…これ…」
「大丈夫。痛いことはしないから」
こういうところが、社長はずるいと思う。
Sっ気は強いけれど、決して荒々しくはしない、むしろ優しくて甘い。
その優しさと甘さがもっと欲しくて、身も心も捧げてしまうのだ。

次は首元に何かが回された…これは、首輪?
「君は僕のかわいいペットだ。こっちへおいで」
首輪に繋がったリードを引かれ、恐る恐る付いて行く。
「ここに四つん這いになってごらん」
「えっ…」

戸惑いながらも足の感覚を研ぎ澄ませると、マットのようなものが敷かれていることが分かったので、ゆっくりと膝をつき、意を決し両手をついた。
「いいね、その顔を上げて口が開いた感じ。いやらしい」
無意識な仕草をいやらしいと言われると、自分の素が淫らであると指摘されているようで、途端に体が熱くなる。
恥ずかしくなり口を結んだ私に、社長は更なる意地悪を仕掛けてきた。
「閉じちゃダメだよ。開けて」
社長の掌が私の頬を包み、社長の指が私の唇をなぞる。
あぁ、やっと、触れてもらえた。
今日初めて触れてもらえた喜びに、思わず吐息が漏れる。

「いい子だね。もっといやらしい姿を見せて」
唇に何かの感触を感じる、指とは違う何か…。
「何?これ…」
「大きく口を開けて。もっと」
必死で大きく開けると、両端に紐が付いた球体…猿轡が入ってきた。
私には縁遠いものだと思っていたのに…これを使う日が来るなんて…つまりそれは、社長のお遊びがどんどんエスカレートしていることを意味していた。
「いやっ…あがっ…」

初めての行為は、やはり恐ろしいものである。
特に、身体に無理を強いる行為は、自分自身がどう反応するか想像ができず、余計に怖い。
それでも…できる限りのことをしたいと思ってしまう。
「あ…あ…あ…」
知らなかった、本当に、全く言葉を発することができないなんて。

口を無理矢理開けさせられているせいか、自然と涙と唾液が溜まってくる。
涙はともかく、唾液を垂れ流す姿など見られたくない。
でも、このままでは溢れてしまう…そう思うほどに、そう思うだけで、羞恥の極みに一人で体を捩った。

「どうした?」
姿は見えないが、声色で分かる。
社長は今、征服欲を満たされ、笑っているに違いない。
そうか、私はもう、この人の前で、普通の女では居られないのだ。