すぐ手の届く処にある大切な何かを求めて…
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鮎川 美緒×一枚のパジャマ
Short Story

一枚のパジャマ

華やかな時間のあとに、静かな夜が訪れる。
誰かと笑う時間と、ひとりの時間。
どちらも、彼女を形作っている。

Introduction
誰かに見せるための顔と、誰にも見せない顔。
そのどちらかだけが本当なのではなく、どちらも今の彼女をつくっている。
静かな夜の温度とともに、自分を少しずつ許していく物語。

飾らない時間のなかで、見える表情がある。
その変化に気づいたとき、物語も少しずつ動き始める。

Novel

「一枚のパジャマ」

Chapter 01 / 静かなはじまり

楽しい時間が、好きだった。

誰かと笑っているときは、ちゃんと自分がそこにいる気がする。
言葉を交わして、少し距離が縮まって、相手の表情がやわらぐ瞬間。
ああ、この時間は本物だと思える。

でも――帰り道、ひとりになると少し寂しくなる。

部屋に戻ると、さっきまでの温度がすっと消えて、
静けさだけが、ゆっくりと広がっていく。

満たされていたはずなのに、どうしてだろう。
自分の輪郭だけが、やけにくっきりと浮かび上がる夜がある。

その感覚に、まだ慣れないまま、同じような日々を繰り返していた。

ある日、何気なく手渡された小さな袋。

「似合いそうだったから」

Chapter 02 / 変わるきっかけ

そう言って笑うその人の顔は、いつもと変わらないのに、
中に入っていたものは少しだけ意外だった。

やわらかい色のパジャマ。
繊細で、どこか落ち着いた、でも少し可愛らしいデザイン。

仕事とは関係のない、完全に“私のためだけのもの”だった。

その夜、何となく袖を通してみる。

鏡に映った自分は、いつもと少し違って見えた。

誰かに見せるための自分でもなく、整えられた顔でもなく、
ただ静かにそこにいるだけの自分。

なのに――少しだけ、嬉しかった。

それから、パジャマを選ぶ時間が好きになった。

シンプルなもの、少し可愛いもの、落ち着いた色、少し華やかなデザイン。

どれも外で着る服とは違うのに、どれもちゃんと、自分にしっくりくる。

Chapter 03 / いつもと少し違う私

クローゼットの中に、“誰にも見せない自分”が少しずつ増えていく。

夜、灯りを落として、お気に入りのパジャマに包まれる時間。

何をするわけでもないのに、その静かな時間が、少しずつ心地よくなっていった。

あのときもらった一着が、きっかけだった。

誰かのためじゃなく、自分のためだけに過ごす時間があってもいいと、 初めて思えた夜だった。

もちろん、外に出ればまた違う顔になる。

少し華やかな服を選んで、丁寧にメイクをして、言葉を選んで、空気を整えて。

楽しい時間を作るための、もうひとつの自分。

どちらが本当かなんて、もう考えなくなった。

誰かと笑う自分も、ひとりでパジャマに袖を通して、少しはしゃいでしまう自分も。

どちらも、ちゃんと“私”だと思えるから。

違う顔をしているようでいて、本当はどこかで繋がっている。

一枚のパジャマが、その境界を少しだけ曖昧にしてくれた。

だから明日も、あなたに会いに行く。

いつもと同じように、でもほんの少しだけ違う顔で。

Profile & Reservation

鮎川 美緒さんの雰囲気を、もっと近くで。

作品の中で描かれた、静かでやわらかな時間。
写真だけでは伝わりきらない魅力を、プロフィールページでもぜひご確認ください。

Reservation

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