九重 艶香×大正ロマン

2024.11.25

蒸気機関車から霞む景色
九重 艶香

筆者:中居
文字数 983 写真 11 枚

現代の賢さや便利さは、私にとってはどこか物足りない。
誰もが手元の画面を見て不敵に笑っている。
時には口いっぱい笑い合う姿をみんな求めていると思う

心の奥底ではいつも孤独を感じて
埋めることを求めて帰宅し、机に向かって、
大正時代の詩集や文学が私を包み込む。

その一文が、私の想像力を刺激し、憧れの世界へ連れて行ってくれる。
そこに描かれる知的な男性たち、現実に見たことのない理想の姿。
理知的な言葉で周囲を魅了するかのような。
そんな人物がいたのなら、一度でいいから出会ってみたかったと、恋息をつく。

でも、知っているだけでは、私の心を震わせるには少し足りない。
新しいことに挑戦し、未踏の地を歩むような勇気を持つ人。
時代への哀愁を抱いた映像のような部分がある人に、私はどうしても心を奪われる。

そんな人と語り合いを超えた夢を共有することができたら・・・
そのような幻想が、私を熱くさせます。

私が特に心に惹かれるのは、あの時代の男性が「男らしさ」を生き様として体現して頃。
ただ力が強いだけではない。 知性と品格を大切に、自己の信念に忠実でありながらも、他人への思いやりを忘れない。

 明け前の蒸気機関車の車窓から見える霞む風景に、ふと詩を詠むような感性を持ちながら、時にはいつかのために一歩前へ出るような覚悟を持っているような感じがして
心地よい寂寥感に包まれる。

現代の時間に縛られながらも、私の心はいつも過去に生きている。
私は何度も過去まで旅立ち、当時の雑誌や書籍をめくりながら、時間を忘れる。
それがただ夢に過ぎないことは、私自身が一番よくわかっている。
私の孤独を埋めてくれる唯一の慰めなの。

時折、私も自分自身に問いかける。この哀愁に満ちた憧れたは、本当に私の人生に必要なものなのか?
現実を見つめ、今この時代を生きるべきではないか?

私は、虚構であっても、大正の世界に生きる人々の姿に心を託していた。
それが私の日常に、かすかな明かりを灯してくれる。

月の光が窓辺を照らす中、私は静かに本を閉じた。
この哀愁に漂うひとときが、私にとっての幸せだと感じながら。
どこかで聞いた時計の針が、また一秒を刻む。

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