大鳳 小津絵×猫
(×シリーズ第15回)

私と主人と日光と

×(カケル)シリーズ第十五弾

大鳳 小津絵

2021/2/21
筆者:中居
文字数 1013 写真 7 枚

今日は日が暮れるのが早い
そろそろ帰ってくるころだ
ガチャ、スーッ
一気に冷気が流れ込んでくる
「ただいまー」
主人が帰ってきた

いつも主人は帰宅するや否や
私の頭をわしゃわしゃと撫でて満面の笑みで強く抱きしめる
苦しい…
一通りの帰宅ルーティーンが済んだら
お風呂に直行する
ガチャガチャとなにか機械音を立て「せんたくっせんたく」と
独り言をつぶやきながら洗濯とやらを済ませ
けむりの中に消えていく
遠くの方でエコーの効いた鼻歌を歌いながら
たまに私を呼ぶ声が聞こえてくるが
私は水が嫌いなのでいつもその部屋には近づかない

「あがったよー」
いつも誰に声をかけているのか?
まあ恐らく猫である私にかけているのだろう

お気に入りのパジャマを着て私のもとに近づいてくる
この匂いはごはんの時間だ
ごはんが入っている容器を私に向けて「おいで」と言っている
そこに置いてくれたら食べるのになかなか置いてくれないので
そっぽを向いたら「ふふ」と一人で笑って、そこに置いてくれた。
主人は本当に不思議な人だ

家にいる主人は
本を読んでる時は気配が消えたように集中し
勉強している時は念仏を唱えるように何度も言葉を繰り返し
ストレッチをしている時は私の真似をしたりする
その都度必ずと言っていいほど名を呼んでみては
私の顔をみてにっこりと笑うのだ

不思議な人だ私はあまり人に懐くことはないが
毎回同じ笑顔を私に向け続けてくれる人は主人が初めてだ

とある雨の日、いつもよりだいぶ遅く帰ってきた主人は
無言でずぶ濡れになりながら部屋に入ってきた
ただいまの声も私を呼ぶ声も機械音もない空間で
シクシクと目から私の嫌いな水を流す主人が肩を落とし座っている

いつもの主人じゃない光景にびっくりしたが
私は何故か主人に近づき頬擦りをし流れる水を舐めた
その瞬間声を出して泣くもんだから
その日私は嫌いなお風呂の時も座ってる時も寝る時も
ずっと傍で離れなかった

次の日になるといつもの主人がそこにいた
眩しい太陽光のようにいつもの笑顔
昨日の事はなんだったのか
私にはまったく理解できなかったが一つ言えることは
笑顔のない主人は見たくないと思った

今日帰ってきたらまた強く抱きしめられるのだろう
それでもあの笑顔がずっと見れるならそれも良いか

主人は本当に不思議な人だ

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