双葉 朱音×イマジン
(×シリーズ第14回)

彼女の瞳に映る茜色は、あの日のままであった・・・

×(カケル)シリーズ第十四弾

双葉 朱音

2021/1/23
筆者:高田
文字数 1045 写真 5 枚

 

「この時間が永遠に続けばいい。そんな風に考えたことはありません」

その時、彼女は確かに笑顔であった。はずである

実際は私の願望が生み出した虚構の笑顔だったのかも知れない

そんな、出口のないカラクリの狭間で思い悩もうとした刹那

「でも・・・この時間を楽しかったと、いつまでも思えるように過ごしたいです」

屈託のない笑みを浮かべ、そう言い放った彼女も確かに笑顔であった。

彼女は振りかぶり、振りかざす。

「最後の最後まで目を離さない、でもその瞬間は前を向くんです」

その目に残る矛盾を振り払い、好奇の糧とするために。

「例えば、肩や肘、手首や膝、踵と頭の向きが一箇所でもズレてしまうと

真っ直ぐ飛ばないですよね。だから、精一杯気持ちを込めます」

そう呟いた彼女の瞳は爛々と、あの時を見据えていた

この僅かな隔たりは何なのだろう。

想像に容易いはずだった今、この瞬間をこんなにも遠く感じてしまう。

「あなたの今を教えて下さい」

そう囁きながら私の頬を撫でた言葉達は永く、それは永い戸惑いを残す。

行き場を無くした私の気持ちを知ってか「一緒にボールを探しに行きましょう」と手を引く彼女。

悪戯な笑みが映るスクリーン・・・

全てがヴァーチャル、それで良かったのかも知れない。

「お酒は好きですか?」

唐突に尋ねられ、思わず頷いてしまう。

お酒を飲めないはずがない、彼女の前にいられるのならば

そう自分に言い聞かせ身を委ねる、朦朧と続く螺旋階段の一段目へと。

茜色に染まる頬を見て、あの日の光景に思いを馳せる私を現実の夢へと繋ぎ止める糸

グラスを傾け、重ね合い、談笑が絶え間ない・・・世界とはこんなにも狭かったのか。

「素敵な場所へ行きましょう」

彼女からの誘いもまた、唐突であった。

「ずっと前から気になっていたんです。今までは歩きながら

眺めているだけでしたが、今日はいつもより輝いている気がします」

イルミネーションが夜空に溶け込むような感覚

あぁ、どうしようもなく心が願ってしまう「この時間が永遠に・・・」

そう言いかけた時、交錯し、躊躇う

この言葉を言ってしまったら、彼女はどんな顔をするのだろう

冬空の下、私の言葉は音もなく白い息へと姿を変えた。

咄嗟に手を伸ばし、後悔の息を拾うように夢中で追いかける

「ナイスショット!」

そう言って私の手を握ってくれた彼女の手は、確かに笑顔であった。

 

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