
筋子 【八代 涼楓】
2025.11.16
この時期になると、毎年買い求めてしまう筋子。
少し熱めのお湯の中、指先で筋子をほぐしていく作業は、まるで心を静かにほどく儀式のよう。
粒をひとつ、またひとつと
丁寧に心を込めて扱う。
目の前のものを大切に扱うと、
なぜか自分まで大事にされている気がして。
その感覚が、私はたまらなく好きなのです。
しょうゆ、お酒に少しのみりん。
自分のためだけに調えたたれに、やわらかく光るいくらを沈める瞬間、胸の奥がふわりと満たされていくのが分かります。
すぐには食べられないという、ちょっとした焦らしの時間も愛おしく感じられて。
冷蔵庫の奥に小さな宝物を隠しているみたいで、
その存在を思うだけで胸が温かくなりました。
翌朝、漬け上がった赤い粒は宝石みたいで、白いご飯にのせたら、それだけで幸せの匂い。
こうして季節の味にときめいている自分を見るたびに、
あぁ、私もすっかり「いい大人」なのだなぁ…なんて、ちょっとだけ可笑しくて、でも悪くない気分です。





